語る資格

ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜@シャンテ

サブタイトルいらんだろう。少女漫画じゃあるまいし。

予告ではもっとコメディ色が強い話だと思ってたのに、結構シリアス。それでも現実は
もっとえげつないものだっただろうと日本人のワタシにも容易に想像できる。主人公が
白人なのでどうしても白人視点から書くことになる。気持ちがヒリヒリするような差別
用語ももちろん出てくる。字幕ではウマいことぼかしてるけど。

黒人メイドに育てられ、彼女らの掃除した家に住み、彼女らの作った食事を食べている
くせに同じトイレを使うと病気がうつるとか、どんだけ頭弱いのよ、と普通に考えれば
わかることなんだけど、数十年前のアメリカ…特に南部では当たり前に考えられていた
という事実が様々なエピソードに寄ってこれでもか、と突きつけられる。

主人公のスキーターも大学に行かなければ、就職しないで他の同級生と同じように結婚
して子供を産んでいれば、同じように差別する立場になったかもしれない。そもそも
黒人メイド達の声を集めて出版するというのも一種の差別の現れではないかと思う所も
あるのだけど、誰かが声を上げないと何も変わらない、どんな考え方があってもそれが
トリガーになって何かが変われば、ということなんだろうね。ほんとにエマストーンが
かわいいの、いい仕事を選んでるなぁ。

エイビリーンやミニーに思う所はたくさんあるけど、ワタシが語っていいのかわからん。
出番は少ないけど、スキーターの家のメイドだったコンスタンティンも老齢故の心の
深さと悲しさがひしひしと感じられた。スキーターの母も彼女をクビにしたくなかった
のに、周りの目を気にしてそうせざるを得なかった苦しさ、なんなんだろうね…。

その通りのクソ女ヒリー、金持ちのお嬢様だけど頭が弱くて、そのくせ階級意識だけは
強くて、黒人メイドを闇雲に差別するだけじゃ飽き足らず元カレと結婚した同級生を
あからさまにハブにしたりする。女のイヤな所をゼーンブ体現したような女だけど、
当時はこんな女が普通にいて、その子も同じようなイヤな子に育って行くのね…あぁ、
学が無いって本当に不幸なことなのね。ブラウスダラスハワード、ロンハワードの娘
なのね。へー…と、彼女の出演作結構見てますよ、ワタシ。あらら。

ヒリーの元カレと結婚したシーリアはヒリー達同級生からハブにされているおかげで
ヒリーの家をクビになったミニーを迎え入れる。メイドを雇うのが初めてという
シーリアは自分と対等な立場でミニーと接する、シーリアもミニーも「差別された
もの同士」なのね。それによってミニーは心を開き、時にイラッとさせる空気の読め
ないヒリーも一歩前に進むことができるようになる。ヒリーの夫が素敵。

しかしラストのエイビリーンがクビにされるシーンは蛇足だった気がする。

2時間半だれること無く見られた。いくら書いてもまだ出てくるし、色んな立場から
考えることができる秀作。

デジタルではなくて35mmで見たんだけど、フィルムはいいなぁ。